犯罪収益移転防止法とは?オンライン本人確認eKYCの要件とあわせて解説 – DRM SalesKnowledge Media

犯罪収益移転防止法とは?オンライン本人確認eKYCの要件とあわせて解説

2024年1月12日 オンライン本人確認

犯罪収益移転防止法は、犯罪による収益の悪用を防ぐための重要な法律です。この法律には、特定事業者に対する様々な義務が定められており、その遵守が求められています。本記事では、法律の概要とあわせてeKYCの要件について詳しく解説します。

犯罪収益移転防止法とはどのような法律?

犯罪収益移転防止法(犯収法)とは、犯罪による収益をマネー・ロンダリングやテロ資金の供与などに悪用されないよう防止することを目的とした法律です。特定事業者に対し顧客の本人特定事項の確認、取引記録の保存、疑わしい取引の届出などの義務を貸しています。

犯罪収益移転防止法の対象となる特定事業者

犯罪収益移転防止法の対象となる特定事業者は以下のとおりです。

・金融機関
・ファイナンスリース事業者
・クレジットカード事業者
・宅地建物取引業者
・宝石・貴金属等取扱事業者
・郵便物受取サービス業者
・電話受付代行業者
・電話転送サービス事業者
・弁護士または弁護士法人
・司法書士または司法書士法人
・行政書士または行政書士法人
・公認会計士・監査法人
・税理士または税理士法人
引用:https://www.mlit.go.jp/common/000987503.pdf

犯罪収益移転防止法の対象は、事業者によって定められている特定の取引や業務です。これを、特定取引といい、犯収法施行令7条に列挙されている取引と、特別に注意を要する取引及びハイリスク取引のことを指します。一部の例が下記のとおりです。

・イ:預金又は受入れを内容としる契約の締結
・ロ:定期預金等の受入れを内容とする契約の締結
・ハ:信託に係る契約の締結

過去の犯罪収益移転防止法の改正内容

犯罪収益移転防止法は2007年4月1日に一部が施行、翌年3月1日に全面施行され「本人確認法」と「組織的犯罪処罰法」を置き換える形になりました。その後、2018年と2020年に改正が行われ、今のような形になっています。

ここでは、改正の内容を詳しく見ていきます、

2018年11月30日→eKYCの手法が追加

2018年11月の改正では、オンライン本人確認「eKYC」の手法の追加、特定事業者の義務に関する規定が明確化されました。

eKYCとは、本人確認資料もしくはICチップに記録されている情報と、本人の顔写真を送信して手続きを進める手法です。これにより本人確認に要する時間が大幅に短縮され、ユーザーにとっての利便性も向上しました。

しかしなりすましを防ぐため、顔写真の撮影はリアルタイムで行わなければいけません。フォルダに保管されている画像は使用できないので注意が必要です。

2020年4月1日→本人確認の方法が厳格化

2020年4月1日の法改正では、郵便を利用する本人確認がより厳格化されました。本人確認を進める際、転送不要郵便を受け取るケースがあります。従来は本人確認資料が1点で受け取れたものの、改正により2点必要になりました。

さらに、本人確認資料の提出内容も下記のように変更されています。

・特定事業者が提供するソフトウェアで厚みや特徴を捉えて撮影する場合は2点
・運転免許証とICチップの情報をそれぞれ1点ずつ(計2点)

犯罪収益移転防止法によって定められているeKYCの要件

犯罪収益移転防止法によって定められているeKYCの要件は4つあります。

・「ホ」方式:本人確認書類の画像と本人容貌画像の送信
・「ヘ」方式:ICチップ情報と本人容貌画像の送信
・「ト」方式:銀行など特定事業者への照会
・「ワ」方式:公的個人認証(電子証明)の送信

それぞれ詳しく解説していきます。

「ホ」方式

本人確認書類と顔写真を撮影・送信する方式です。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付き書類をスマートフォンのカメラで撮影します。この際、表裏だけでなく厚みもしなければいけません。

また、すべての写真はリアルタイムで撮影したものを提出します。フォルダに保存されている画像は提出できないため、なりすましの防止に効果的です。

「ヘ」方式

運転免許証やマイナンバーカードに搭載されているICチップの情報と、顔写真を撮影・送信する方式です。ICチップの読み取りには、NFC機能のあるスマートフォンやカードリーダーが必要です。

また、暗証番号も入力しなければいけません。セキュリティが強力な一方、失念している場合は初期化および再設定をすることになります。

「ト」方式

本人確認書類の写真もしくはICチップの情報を送信した後、ユーザーが利用している金融機関やクレジットカード会社に本人特定事項を確認する方式です。

もしくは、事業者がユーザー本人の口座へ少額振込を実施する方式もあります。後者の場合、ユーザーはネットバンクの取引履歴をスクリーンショットなどで撮影し、事業者に送信しなければいけません。

「ワ」方式

マイナンバーカードに搭載されているICチップの情報と、発行時に設定した暗証番号を用いる方式です。マイナンバーカードは暗証番号の入力を複数回間違えるとロックがかかるので、安全性が高いです。

ユーザーにとっても使いやすい反面、暗証番号を失念していると手続きを進められず初期化が必要なので、注意しなければいけません。

郵送を利用するeKYCの種類

eKYCの中には郵送を利用する方式もあります。その方式が下記の4つです。

・「チ」方式
・「リ」方式
・「ヌ」方式
・「ル」方式

それぞれ見ていきましょう。

「チ」方式

本人確認書類の写真もしくはICチップの情報を送信した後、転送不要郵便にて本人確認を完了させる方式です。転送不要郵便は一般的な本人確認でも利用されているので、ユーザーにとっても身近といえるでしょう。

「リ」方式

ユーザーから本人確認書類を2点受け取り、転送不要郵便にて本人確認を完了させる方式です。本人確認書類のパターンは2つあります。

・本人確認書類の写し2枚
・本人確認書類の写し1枚と、保管書類の原本または写し1枚

なお保管書類に使用できるものは納税証明書・公共料金の領収書などです。

「ヌ」方式

預金もしくは証券口座を開設する時に用いられる手法で、、ユーザーから本人確認書類を受け取った後、転送不要郵便にて確認を完了させます。なお転送不要郵便はユーザー本人のほか、雇い主である法人宛てに送付することもできます。

「ル」方式

転送不要郵便を送付する時、郵便局員が本人確認書類を目視で確認する方式です。2020年4月1日の法改正により厳格化され、提出する本人確認書類は顔写真付きでなければいけません。

まとめ

犯罪収益移転防止法は、マネー・ロンダリングやテロ資金供与の防止を目的とし、特定事業者に対して本人確認や取引記録の保存などの義務を課しています。特定事業者や特定取引は明確に定義され、違反すると処罰が科せられます。

また、法改正によりeKYCの手法が導入ましたが、その使用には様々な要件があります。これらの法律や要件の遵守は、社会全体の安全確保に繋がりますので、特定事業者は適切な対応が必要です。

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